折鶴

首页    19.Masahiro Kikuno    折鶴

私は以前からリピーター機構と、オートマタを腕時計に搭載したいと思っていました。
リピーターのゼンマイを使って人形に動きを持たせることは可能だと考えていましたが、どのようなからくり人形にすべきか悩んでいました。
なかなか作業が進まない中、気分転換の為に訪れた旅館を去るとき、ふと天井を見上げるとそこにはガラスでできた折鶴がシャンデリアのように舞っていました。
ひらめきを得た私は折鶴が舞うリピーターウォッチというコンセプトで図面を起こす作業に取り掛かりました。
しかし、今までにリピーター時計を分解した経験が数回しかなく、文献での知識しかなかったため、オートマタを搭載するアレンジを加えるにあたり困難を極めました。
当初は丸型のムーブメントで設計を進めていましたが、なかなか配置が定まりませんでした。
そんな折、日本の伝統的な家具『船箪笥』を見る機会があり、その美しいデザインを外装に取り入れたいと考えました。
部品の配置も、その外装にあわせた角型のムーブメントならば巧く定まったのです。
図面が完成し、実際の制作にあたっては、部品点数が多く特にレバー、バネ類が多いため、手作業でを切り出す手法でそれらを作り出すことは大変でした。
幾度も失敗を繰り返し、設計上のミスや改良すべき点は残されていますが、なんとか形にすることができました。
この時計の制作を通して、リピーターを作りあげた過去の時計師の苦労と偉大さを実感できたことが何よりの収穫でした。